黒豆の里「鞆渕(ともぶち)」 がんこ農家の挑戦

今週号は、“Good Life(上質な暮らし)”を提案する特集をお届け。高級品とされる“丹波の黒豆”と比べても引けを取らない紀州鞆渕産“がんこ農家の黒豆”。希少価値の高い秋の味覚「黒枝豆」が旬を迎えています。

原産地表示をきっかけにブランド化へ
黒枝豆が味わえるは10月の数週間

紀の川市南東に位置する山あいの集落・鞆渕地区。標高400mの山間部で、昔ながらの方法で育てられる〝がんこ農家の黒豆〞は、全国的に有名な丹波篠山産に勝るとも劣らないと評判です。

鞆渕地区では、40年近く前から、昼夜の寒暖の差が大きいことを生かして「黒豆」を栽培していますが、〝鞆渕産〞として日の目を見るようになったのは、ここ数年のこと。

「昔から粒が大きく、品質の良い黒豆を作っていましたが、ノンブランドで出荷していたため、知られることはありませんでした。農産物の原産地表示が義務化されたこともあり、2006年からブランド化する活動を始めました。それが〝がんこ農家〞です」。鞆渕黒豆部会の井中啓泰会長はこう説明します。

ところで、皆さんはお正月のおせち料理以外で「黒豆」を食べますか?「黒枝豆」と答えた人はかなりの食通。「黒豆」が成熟する前に収穫されたものが「黒枝豆」で、「枝豆(大豆)」は、ビールがおいしい7〜8月に最盛期を迎えるのに対し、「黒枝豆」は今が旬。しかも、味わえるのは、10月の2〜3週間で、中でも〝がんこ農家の黒枝豆〞は、流通量が少なく、地元のスーパーや産直市場などごく限られた市場でしかお目にかかれません。

確かな品質でブランド価値を浸透

今が旬の「黒枝豆」。流通量・期間が短いため“幻の枝豆”とも

30軒の農家で生産量は年間8トン
むらおこしプロジェクトで認知度向上

種まきも収穫も手作業。手間ひまかけて育てます


現在、鞆渕地区で黒豆を作っている“がんこ農家”は約30軒で、黒枝豆は約6トン、乾燥黒豆は約2トン生産しています。“がんこ農家”が育てているのは、早生(わせ)品種の「丹波の香」と晩生(おくて)の「丹波黒」の2種。「丹波の香」は10月初旬にすべて枝豆用として、「丹波黒」は10月中旬に枝豆、11月に黒豆が収穫されます。

「6月の種まきから11月の収穫まで手間ひまかけて栽培し、煮豆用の黒大豆は、豆本来のおいしさを生かすため、機械乾燥ではなく天日干しします。選別作業も一粒一粒手作業で行って、極上品だけを出荷するのが、“がんこ農家”。そうすることで品質を保っています」と、井中さんは話します。

「本当は、ビールがおいしい時期に枝豆を作りたいんですけどね。枝豆といえばやっぱりビールでしょ?!その方がもっと認知してもらえると思うんです。でも、品種の特性なのか、早く植えても育たないんです」と。一般的に煮豆用の黒大豆は大粒のものが好まれ、「丹波黒」は世界最大といわれる大粒種。そこにはこだわりがあり、品質にも絶対の自信があります。しかしながら、“丹波の黒豆”のような“ブランド力”がなかったため、かつては買い付け業者に主産地の3分の1程度の価格で販売していたそう。

長らくそうした状況が続いていましたが、2006年、地元の農家たちが立ち上がります。農家所得の向上と産地活性化を図るため、和歌山県の「和歌山ベジフルストーリー開発支援事業」を受け、ブランド化を検討。“がんこ農家”の商標権を取得しました。08年には、鞆渕黒豆部会とJA紀の里、紀の川市、県那賀振興局で「ともぶち地域活性化実行委員会」を組織し、「黒豆の里・むらおこしプロジェクト」が始動します。

畑の一区画で、黒豆の定植、黒枝豆・黒豆の収穫を体験してもらう農業体験イベントを毎年開催。さらに、販路開拓のため、食品加工会社などに働きかけ、数々の“黒豆スイーツ”も誕生しました(下記参照)。郵便局の「ふるさと小包」での取り引きも成立し(今年の黒枝豆の受け付けは終了しています。黒大豆、黒大豆煮については下記参照)、この10年で“がんこ農家の黒豆”は広く知れ渡るようになりました。

一方で問題も出てきています。「丹波に行って黒豆の畑を見せてもらったことがありますが、それはそれは広大な土地。山里の鞆渕でこれ以上畑を広げることはできず、後継者問題もあって生産量を増やすことは難しいのが現状です」と井中さん。

需要が拡大し、ますます希少価値が高まりつつある“がんこ農家の黒豆”。JA紀の里によると、黒枝豆は10月下旬まで販売しているとのこと。今宵(こよい)の晩酌のあては“幻の枝豆”に決まり!

農作業体験は今年で10回目を迎えました

「鞆渕がんこ農家の○友(まるとも)黒大豆」


JA紀の里のファーマーズマーケットで10月下旬まで販売。ただし数に限りがあり早々に売り切れることも

問い合わせ めっけもん広場
住所 紀の川市豊田56-3
電話 0736(78)3715
営業時間 午前9時~午後5時
定休日 第1火曜
ホームページ http://www.ja-kinosato.or.jp/01_mekkemon
問い合わせ OINACITY(オイナシティ)
住所 岩出市荊本20
電話 0736(62)8313
営業時間 午前9時~午後6時半
定休日 第1水曜
ホームページ http://www.ja-kinosato.or.jp/facility/oinacity


来年のおせち料理にいかがですか?11月から受け付け開始予定。郵便局でカタログ販売申込書を配布しています(一部簡易郵便局は取り扱いなし)。詳細は商品提供者のJA紀の里に問い合わせてください

問い合わせ JA紀の里鞆渕選果場
電話 0736(79)0026
営業時間 午前8時半~午後5時
定休日 土・日曜、祝日

がんこ農家の黒豆スイーツ

黒豆せんべい 450円(8枚入り)


愛情たっぷり無添加の手焼きせんべい。黒豆は蒸してオーブンで焼き、水分を飛ばして使用。生地にも黒豆を練りこんでいます

鶴姫の気持ち 450円(15枚入り)


「黒豆せんべい」をコンパクトにしたサイズ(15枚入り)。紀の川市商工会特産品開発事業委員会により企画、開発

黒豆入りどらやき 150円


やさしく炊きあげられた黒豆が2粒。豆の甘さとふくよかな食感が、あんとベストマッチ

問い合わせ かがり火製菓
住所 紀の川市粉河3192-1
電話 0736(74)3315
営業時間 午前9時~正午、午後1時~4時
定休日 無休

紀の川市鞆渕産 黒豆大福 150円


黒豆の濃厚な香りと絶妙の歯ごたえ。やわらかなお餅、こしあんとのバランスよし

≪取扱店舗≫
和歌山市観光土産品センター(和歌山市一番丁)、観光物産センターこかわ(紀の川市粉河)など

問い合わせ 麺彩工房ふる里
住所 紀の川市打田21-1
電話 0736(77)0530
営業時間 午前9時~午後4時
定休日 日曜
ホームページ(通信販売あり) https://store.ponparemall.com/pro/mensaikobo/

紀州鞆渕黒豆ロールケーキ 1250円


ペースト状にして生クリームにも黒豆を混ぜ込んでいます。生地は米粉を使い、ふんわりやわらかな食感

紀州鞆渕黒豆パウンドケーキ
化粧箱入り 1080円


黒豆を2日かけて仕込み、パウンドケーキに。二層に分かれた生地にもペーストにして使用しています

問い合わせ ホテルアバローム紀の国
住所 和歌山市湊通丁北2-1-2
電話 073(436)1200
営業時間 午前11時~午後5時
定休日 無休
ホームページ(通信販売あり) https://www.avalorm.com/



フロント特集

 

交通安全キャンペーン2024 贈呈式

交通安全キャンペーン2024 贈呈式

おすすめ記事

  1. プレミア和歌山認定品の毬玉アクセサリー、天然石や真鍮のアクセサリーやビーズ・スパンコール刺繍の作品…
  2. リビング和歌山4月20日号「知ってた?有田市に国内最大級のチューブスライダー出現」
     3月23日、有田市初島町に誕生した健康スポーツ公園「BIG SMILE PARK(ビッグ・スマイ…
  3. おさかな、食べていますか? 海に囲まれたニッポンは、種類豊富な水産物に恵まれています。今年度、全国…
  4. リビング和歌山4月6日号「生地卸商から始まり 多角化戦略で進化する 老舗100年企業」
    地域経済をリードする地元企業の魅力に迫る「すごいぞ!和歌山の底力」シリーズ。今回は和歌山市に根付い…
  5. リビング和歌山3月30日号「遊びを通した心の栄養士 おもちゃコンサルタント」
    おもちゃの広場では、全国のおもちゃ美術館に展示されている国内外のおもちゃが並びます 山本記代さん…

電子新聞 最新号

  1. リビング和歌山4月20日号

    2024/4/18

    リビング和歌山4月20日号

    リビング和歌山4月20日号  3月23日、有田市初島町に誕生した健康スポーツ公園「BIG SMILE…
バックナンバー
リビングカルチャー倶楽部
夢いっぱい保育園

お知らせ

  1. 2024/4/18

    2024年4月20日号
  2. 2024/4/11

    2024年4月13日号
  3. 2024/4/4

    2024年4月6日号
  4. 2024/3/28

    2024年3月30日号
  5. 2024/3/21

    2024年3月23日号
一覧

アーカイブ一覧

ページ上部へ戻る