餅をまけば福も人も呼び込む!
和歌山は餅まきの聖地

リビング和歌山2026年2月21日号「餅をまけば福も人も呼び込む! 和歌山は餅まきの聖地」

厄よけ神事、地域のお祭り、開店祝い、周年イベントなど、さまざまな場面で縁起を担いで行われる「餅まき」。和歌山県は「餅まきの聖地」といわれるほど各地で盛んに行われています。県内に根付く餅まき文化の実情を探ってみました。

今年2月1日に行われた須賀神社(みなべ町)の「還暦厄除(やくよけ)祈願祭」の餅まき。奉納された餅や菓子がまかれました

江戸時代の図会に残る餅まき
県内全域で年がら年中開催

「餅まき」は、地域や世代によって「餅投げ」「餅ほり」と言って親しまれ、災いを払い、福を分けるために新築の上棟式で餅や小銭をまいた「散餅散銭(さんぺいさんせん)の儀」という古くからの神事が、江戸時代に入って庶民の間に広がり、定着したとされています。

和歌山県立博物館が所蔵する江戸時代の地誌書『紀伊国名所図会(きいのくにめいしょずえ)』には、175年ほど前の蛭子(えびす)神社(現・水門吹上神社)での餅まきの様子が記されています。新嘗祭(にいなめさい)で「牛の舌餅」と呼ばれる大きな餅が投げられ、豊作を祝い、神様に感謝する行事は今日まで継承されています。

「近年は上棟式で餅をまく家は少なくなりましたが、神事、法会、祭礼、式典などでの厄払いや安全祈願、五穀豊穣、豊漁祈願に加え、集客の仕掛けとしても県内各地で年がら年中餅まきが行われています」と話すのは、和歌山社会経済研究所の研究部長・林清仁さん。

林さんは、和歌山県庁広報課に勤務していた2012年、NHKの全国放送で「和歌山の餅まき」が取り上げられたことをきっかけに、県内の餅まき事情について調査を開始。「県のPRになれば」と、コロナ禍でイベントの自粛が求められた20年まで、SNSで情報を発信していました。

当時作成した「餅まきカレンダー」には、年間300件を超える行事が記録され、他にも、広く周知されていない地域のお祭りも数多くあり、「和歌山は餅まきの聖地。残したい文化です」と林さんは話します。しかし、コロナ禍を機に、存続が困難になってしまった現状も見受けられます。

林清仁さん

和歌山社会経済研究所 研究部長・林清仁さん

春と秋は餅まきシーズン
厄払いと福分けで地域のつながり

その要因は、過疎化、氏子・檀家の高齢化、少子化による祭りの担い手不足、もち米の高騰などが挙げられ、昨今の社会情勢が伝統行事にも影響を及ぼしています。それでも、和歌山県では今もなお盛大に餅まきが行われている地域があり、「3月の「『初午(はつうま)祭』、4月の『春祭り』、10月の『秋祭り』は“餅まきピーク”」とのこと。

「初午」は2月最初の「午の日」に、農耕の神様が降臨したとされる故事に基づき、全国の稲荷神社で豊作や商売繁盛を願う行事が行われる日ですが、「なぜか和歌山では厄よけの要素が強く、厄払いのために旧暦の初午に餅をまく風習が根付いています。私の子どものころは、厄年の人がそれぞれの家でついた餅をまき、集落の各家庭をまわって“餅まきのはしご”をしていたことを覚えています」と林さん。一方、春祭りや秋祭りは、神様仏様に奉納した餅をまき、福を地域で分かち合うという意味が込められているそうです。

紀伊国名所図会 後編巻一 蛭子神社の新嘗祭部分 和歌山県立博物館蔵(館321)

鬪雞(とうけい)神社(田辺市)の「節分祭」では、豆まきも餅まきも行われます

拾って体感しよう「和歌山の餅まき文化」

 林さんが調査した「和歌山の餅まき事情」の中から、社寺の年中行事として現在も開催されている「名物餅まき」と、これから訪れる「春の餅まきシーズン」に参加できる餅まきを一覧にしました。

和歌山の名物餅まき8選

須賀神社(みなべ町)
十日戎祭

須賀神社(みなべ町) 十日戎祭

十日戎

1月9日~11日

 宵(よい)えびす、本えびす、残り福の3日間で計4回の餅まきが行われ、2月1日の「還暦厄除祈願祭」でも餅や菓子がまかれます。他にも、地域内の飛地境内社で年間20回ほど餅まきが行われています。みなべ町は特に餅まきが盛ん!

問い合わせ 0739(74)2204
住所 みなべ町西本庄242

興国寺(由良町)
天狗まつり

興国寺(由良町) 天狗まつり

成人の日

1月の第2月曜

 昔、本堂などが火災に見舞われた後、天狗が現れ一夜にして寺を建て直したという伝説にちなんで、行われているお祭り。コロナ禍以降、天狗の舞などは復活していませんが、天狗堂での祈祷(きとう)後、餅まきは再開されています。

問い合わせ 0738(65)0154
住所 由良町門前801

鬪雞神社(田辺市)
節分祭投餅行事

鬪雞神社(田辺市) 節分祭投餅行事

節分

2月3日

 一年間の諸々の災いを払い、無病息災を祈る祭典。神事の後、豆をまいて災いをなす鬼を払い、参列の厄年の人が年齢の数だけまく「厄分け餅」と、神前からの「福分け餅」をまいて、厄を分け福を持ち帰ってもらう斎行(さいこう)です。

問い合わせ 0739(22)0155
住所 田辺市東陽1-1

紀三井寺(和歌山市)
初午福つき大投餅

紀三井寺(和歌山市) 初午福つき大投餅

旧暦の初午

2026年は3月21日

 無病息災を願う恒例行事で、終日「大祈祷会」が厳修され、厄よけを祈願し、除災招福を祈念。「大福」と赤く書かれた直径約80cmの大福餅の他、大小の餅、協賛企業のパンや菓子、スポンジなどを、年男らが裃(かみしも)姿で投げます。

問い合わせ 073(444)1002
住所 和歌山市紀三井寺1201

長田観音 (紀の川市)
二ノ午厄除大投餅奉修

長田観音 (紀の川市) 二ノ午厄除大投餅奉修

旧暦の二ノ午

2026年は4月2日

 本尊の如意輪観音(にょいりんかんのん)は「厄除(やくよけ)観音」として名高く、「初午」「二ノ午」は多くの人が参拝に訪れます。「初午」には露店や植木市が並び、「二ノ午」の大投餅は境内を埋め尽くす人々でにぎわいます。

問い合わせ 0736(73)3566
住所 紀の川市別所58

幸神社(湯浅町)
幸神社秋祭

幸神社(湯浅町) 幸神社秋祭

秋祭り

10月16日 栖原漁港

 境内や参道で神輿渡御(みこしとぎょ)や太鼓の演奏、三面獅子舞の奉納が行われ、祭典終了後、栖原漁港の建物屋上から餅がまかれます。餅と一緒に縁起物の「懸(か)け鯛(たい)」も投げられ、大いに盛り上がります。

問い合わせ 0737(62)4388(國津神社)
住所 湯浅町栖原805(栖原漁港)

金剛峯寺伽藍明神社(高野町)
明神社秋季大祭

金剛峯寺伽藍明神社(高野町)  明神社秋季大祭

秋祭り

10月16日
伽藍大塔(御影堂側)

 10月の高野山は、毎日どこかで餅まきが行われているといっていいほど。そんな中でも最も規模が大きいのが、明神社秋季大祭での餅まき。根本大塔から投げられる餅を、日本人だけでなく外国人観光客も一緒に奪い合います。

問い合わせ 0736(56)2011
住所 高野町高野山385

水門吹上神社 (和歌山市)
牛の舌餅投げ

水門吹上神社 (和歌山市) 牛の舌餅投げ

新嘗祭

11月23日

 「紀伊国名所図会」に描かれた「牛の舌餅投げ」は、現在も続いています。餅まきに使われる餅は約200kg。畳1枚ほどある「牛の舌餅(のし餅)」は今は事前に切り分けて投げられますが、境内に集まる人々の熱気は当時と同じ。

問い合わせ 073(422)7007
住所 和歌山市小野町2-1

予定を立てよう!
春の餅まきカレンダー

2月22日(日)

田辺市 紀州石神田辺梅林
豊穣祈願餅まき大会 ▶14:00

3月1日までの土・日曜、祝日

みなべ町 南部梅林
もち投げ▶14:00
※入園料高校生以上500円、小・中学生200円

3月8日(日)

御坊市 須佐神社
御乙祭▶祭事13:00、餅まき14:30
田辺市 紀州石神田辺梅林
石神大感謝餅まき大会▶14:00

3月10日(火)

御坊市 吉田八幡神社
琴平神社例祭▶祭事15:00、餅まき16:00

3月21日(土)

和歌山市 紀三井寺
大祈祷会・福つき大投餅
▶大祈祷会終日、福つき大投餅16:00
海南市 福勝寺
開運厄除岩屋山初午
▶法要15:00、餅投げ16:00
湯浅町 湯浅大宮顯國(けんこく)神社
初午祭 ▶神事式16:00、餅投げ16:30
印南町 才の川観音
初午会式 ▶祈祷・餅投げ9:00~15:00
※1時間ごとに計6回ほど
みなべ町 千里観音
初午開運餅まき ▶15:00
※千里の浜で開催
上富田町 救馬溪(すくまだに)観音
初午祭▶開運厄除特別大護摩祈祷13:00、厄除大投餅12:00と15:30の2回

4月2日(木)

紀の川市 長田観音
二ノ午厄除大投餅奉修▶17:00

※餅まきは天候などにより予告なく中止されたり、開始時間が変更されたり する場合があります

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