vol.2 好き嫌いの先にある、生き物の役割

 かわいいと気持ち悪いの境目。子どもの頃、私はカタツムリの赤ちゃんが大好きでした。雨あがり、葉っぱの裏をそっとのぞいて、小さな透明の家(殻)を背負った赤ちゃんカタツムリを指輪に見立てて、結婚式ごっこをしていました。その一方で、台所でナメクジを見つけると「ぎゃ~」と声を上げ、「塩、塩っ」と大騒ぎしていました。

同じように、ぬるっとしていて、ゆっくり動く仲間なのに、片方は「かわいい」、もう片方は「気持ち悪い」。この差は何でしょう。

実は、カタツムリとナメクジはどちらも巻き貝の仲間。進化の過程で家を小さくしたり、手放したりして、それぞれの暮らし方を選んできた生き物です。

女性狩猟会里山アップサイクルは、山の整備をしたり、生き物と人との距離感を考えたりする活動をしています。その中で感じるのは、人は自分にとって都合がいいかどうかで、生き物への印象を決めてしまいやすいということです。「畑を荒らす」「家に入ってくる」「見た目が苦手」、そんな理由でやっかいものにされる生き物は少なくありません。

でも、生き物にはその場所で暮らすには理由があります。ナメクジもカタツムリも、落ち葉や植物を食べ、分解することで、土壌の栄養を循環させ、生態系バランスを支える一員です。見た目だけで「嫌だな」と思ってしまいがちですが、自然の中ではちゃんと役割を持っているのです。

もちろん、暮らしの中で困ることがあれば対策は必要です。でも「ただ嫌い」で終わるのではなく、「なんでここにいるんだろう?」と一歩立ち止まってみると、見える景色が変わります。

「かわいい」「気持ち悪い」「いる」「いらない」、そんな単純な線引きではなく、まずは「知る」ことから。雨の日の足元には、そんなことをそっと教えてくれる、小さな「先生」がいるのかもしれません。(里山アップサイクル代表・溝部名緒子)

落ち葉の下に潜り込んだナメクジを手にする溝部さん


著者女性狩猟会・里山アップサイクル代表
溝部 名緒子さん
プロフィール全狩猟免許を取得。サバイバル体験施設「ハンターズイン」のガイドを務める他、さまざまな体験活動を展開中

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