被災地での体験、経験を生かして㉕

駒場工務店 駒場一仁代表

命を守る「津波避難タワー」を設計・施工

 

 東日本大震災以降、地震発生から津波到達までの時間的猶予や地理的条件などにより、高台などに避難が困難と想定される全国の津波避難困難地域で「津波避難タワー」の建設が進んでいます。

駒場一仁さん。一級建築士、福祉住環境コーディネーター

 駒場工務店(日高郡日高川町)の駒場一仁代表は、南海トラフ巨大地震が発生した場合の津波避難困難地域に設定されている御坊市名屋地区に昨年12月に完成した「津波避難タワー」の設計・施工に携わりました。「私は山あいに住んでいて津波の心配はないのですが、紀伊半島大水害のときに、土砂崩れで道路が通行止めになったり、停電になったり被害を受けました。しかし、全国各地で起こる震災の報道を見ても、どこか“人ごと”のところがあって…。今回の『津波避難タワー』の建設で意識が変わりました」と話します。

地域の人がより安心して暮らせるように

御坊市名屋地区の公園に完成した地域住民の命を守る「津波避難タワー」

 名屋地区に完成した「津波避難タワー」は、避難ステージの高さが約10メートル、370人まで収容可能。階段とスロープの動線が同じで、20基あるベンチ式の防災ボックスの中には、水や非常食、簡易テント、仮設トイレなどが備えられています。建築基準法の関係で屋根は可動式テントを採用、また、津波による漂流物の衝撃を和らげる緩衝くいも設けました。「数々の津波避難タワー建設で実績のある静岡県の建築士さんと手を組み、いろいろと教わりました。竣工式で、近隣住民の方から『これで安心して寝れるわ』という言葉をいただいたときに、微力ですが、“命を守る”お手伝いができたのかなと。このタワーが、地域住人にとって、“津波を想定させる怖いもの”となってほしくなかったので、もともとこの地にあった遊具を戻し、子どもたちが集い、日常に溶け込んだ“みんなのタワー”になってほしい」と願います。

 一方、一級建築士として、住宅の備えについても強調します。「わが家は、紀伊半島大水害の直前にたまたま太陽光パネルを設置して…。停電が続く中、昼間は電気をまかなえました。小さいことかもしれませんが、もしもを想定して一つ一つ対策をとっていくことで、より安心して暮らせるのでは?」と。(おわり)

 

一級建築士・駒場一仁さんが伝えたい災害時の備え

◆津波避難タワーは、住民の命を守るタワー。緊急時に“当たり前に上れる”よう避難訓練などで活用を
◆“暮らしの安心”に諦めはNG。環境は自分で変えられます。もしもに備えて一つずつ対策を

コーナー

関連キーワード

 

交通安全キャンペーン2024 贈呈式

交通安全キャンペーン2024 贈呈式

おすすめ記事

  1. リビング和歌山2025年10月25日号「話題を呼ぶNew Spot 県内初! 「ハンズ」オープン」
     10月15日、近鉄百貨店和歌山店に和歌山県初の「ハンズ」がオープン。さっそく話題を集めています。…
  2. リビング和歌山2025年10月18日号「ワークスタイル -これからの“働く”を考える- 今日も社会を動かす場所で」
     近年、警備の仕事で女性の活躍が目立つようになり、女性警備員が全体の7・3%を占めるまでに増えてい…
  3. リビング和歌山2025年10月11日号「勝手にリビングノーベル食文化賞」
     各分野で人類に対して多大な貢献をした人物に贈られる「ノーベル賞」。食欲の秋を迎えた今週は、食の道…
  4. リビング和歌山2025年10月4日号「伊太祈曽駅から四季の郷公園まで運行中 トゥクトゥクに乗ってお出かけ」
     ようやく暑さも和らぎ、出かけやすい季節になりました。伊太祈曽駅から四季の郷公園の間を“トゥクトゥ…
  5. リビング和歌山2025年9月27日号「“無理をしない”を合言葉に 仕事も家庭も全力投球」
     9月25日は「主婦休みの日」。家事や仕事に頑張る皆さんに“自分をねぎらってほしい”という思いから…
リビングカルチャー倶楽部
夢いっぱい保育園

お知らせ

  1. 2025/10/23

    2025年10月25日号
  2. 2025/10/16

    2025年10月18日号
  3. 2025/10/9

    2025年10月11日号
  4. 2025/10/2

    2025年10月4日号
  5. 2025/9/25

    2025年9月27日号
一覧

アーカイブ一覧

ページ上部へ戻る