−第77回−文化財 仏像のよこがお「大泰寺の塑造日光菩薩・月光菩薩立像」

大泰寺日光菩薩立像(右)・月光菩薩立像(左)

 仏像を作る際に使う材料はさまざまです。平安時代以降は木が最も多く用いられますが、飛鳥時代や奈良時代など古くは銅による鋳造が最上で、それに次いで乾漆造(漆を含ませた布やパテで成形する技法)、そして、土で作る塑造(そぞう)が広く用いられました。鋳造も乾漆造もその原型は土やろうを用いた捻塑(ねんそ)技法で作りますから、7~8世紀においては塑造技法がとても重要な役割を担っていたことが分かります。

平安時代以降に下火になった塑造は、鎌倉時代後期ごろに中国・宋から技法が再流入したとみられ、奈良や鎌倉など一部地域で復活しています。そうした中世の塑造技法による仏像を、熊野地方でも確認することができます。

那智勝浦町の大泰寺には、古い仏像が多数伝来することをこのコラムでも取り上げてきました(本連載24、67、68回)。薬師堂本尊である平安時代の薬師如来坐(ざ)像(指定名称は阿弥陀如来坐像)の脇侍(きょうじ)である日光菩薩・月光菩薩立像が、まさしく塑造による作例です。

それぞれ像高58センチほど、ともに合掌し、頭部のやや大きいずんぐりとした動きの少ない立ち姿を示しています。重みのある長い袖などの諸表現は、中国・宋元時代の仏画を忠実に写して表されたもので、同寺の1347(貞和3)年造像の地蔵菩薩坐像の面部との類似もあって、南北朝時代ごろの制作とみられます。

塑造作例は構造的に壊れやすく、両像とも頭部が首で破断した危険な状態だったので、2023(令和5)年に朝日新聞文化財団の助成を受けて修理が行われました。

その際、日光菩薩像の像内に造像当初の構造体が良好に残されていることが分かり、奈良国立博物館のCTで撮影したところ、頭部と体部のそれぞれで竹籠を芯として、塑土を貼り付けつなぎ合わせる技法などが確認できました。

中世の塑像の技法が進化していく途中段階を示すものとみられ、その展開を考える上で貴重な事例といえます。熊野地方には、こうした塑造作例がまだ残されているかもしれません。
(奈良大学教授・大河内智之)

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