海南市や和歌山市で本格養殖 新名物に! 和歌山産のカキ

カキといえば広島県や宮城県が有名ですが、昨年から和歌山県内で新たにカキの養殖に取り組むエリアが増え、産地で収穫したてを味わえる「カキ小屋」がオープンしています。和歌山の新名物、カキを味わってみませんか。

冬が旬のマガキを産地で味わう 塩津漁港にカキ小屋、来年は和歌浦にも

ビタミンやミネラル、タウリンなどの栄養素が豊富で、“海のミルク”とよばれるカキ。冬の味覚の代表格の一つですが、国内で食べられているカキには「イワガキ(岩牡蠣)」と「マガキ(真牡蠣)」の2種類あります。イワガキは夏が旬で、冬にベストシーズンを迎えるのがマガキ。これからの時期、スーパーなどの店頭でもおなじみの食材になるのはマガキで、フライに鍋料理、酢ガキ…などなど、食卓にカキ料理がお目見えするころですね。

さて、そんな“冬のカキ”はほとんどが養殖で、国内では広島県が一大産地。次いで、宮城県や岡山県が知られますが、和歌山県でも養殖に取り組むエリアがあるのをご存じですか。県内では、田辺市新庄でイワガキとマガキ、那智勝浦町浦神でマガキの養殖が行われてきましたが、昨年9月、新たに免許を受け、和歌山市和歌浦と海南市下津町塩津で、マガキの養殖が始まりました。

広島県などの産地では、養殖業者などが簡易的な店舗で水揚げしたばかりのカキを提供する“カキ小屋”がシーズン限定でオープンし、地元の人や観光客などでにぎわいます。そんな本場さながらのカキ小屋が「塩津漁港」内に誕生、「和歌浦漁港」には、来年1月に直売・飲食施設がオープンする予定です。

地域の漁業振興と活性化に

その場で採れた味わいを楽しむ カキ小屋が名物になり、県外からも集客

海南市下津町塩津にある「塩津漁港」、週末になると浜に大漁旗やのぼりを掲げたテントが2つ。昨年11月、塩津漁港内にオープンした“カキ小屋”、「立征(りゅうせい)水産」と「龍王丸(りゅうおうまる)水産」です。どちらもシーズン限定の店舗で、塩津の海域で養殖をしたマガキをその場で提供しています。

塩津漁港では、約3年前にカキの養殖が試験的に始まりました。海南市漁業協同組合に「塩津牡蠣生産者部会」が立ち上がり、現在は4人の漁業者がカキの養殖に取り組んでいます。

収穫したばかりのカキを持つ阿部さん。沖に浮かんで見えるのが、養殖いかだ。約16万平方mでカキを養殖しています

生産者部会の会長を務めるのは、阿部立利さん。大阪市出身で沖縄で漁師となり、4年前この地に移住。沖合い漁をしていましたが、カキの養殖業をする友人から「港でカキを見かけるようなら養殖ができるかも」と聞いたのをきっかけに、興味を持ちました。

「漁をしていたころは、沖に出ると数週間は船中。そろそろ、毎日家に帰れる仕事がしたいな…と、模索しているところでした」と、当時を振り返る阿部さん。「その友人のアドバイスで、岸壁にひっついているカキを集めてザルに入れ、試しに育ててみたんです。すると成長したので、これはいける!と」。その後、全国の産地を訪ね、水質や水温などのデータを取り、本腰を入れてカキ養殖を研究しました。そして稚貝を宮城県から仕入れ、試験的に塩津で養殖をスタート。「この辺りの海域には紀の川と有田川が流れ込み、栄養が豊富でカキの成長が早いことが分かりました。養殖にぴったりだと思います」と阿部さんは話します。

栄養分が豊富な海域で成長が早い 和歌山の塩津をカキの産地に

昨年9月、和歌山県から養殖業の免許を受け、いよいよ本格的に着手。「カキ小屋」を始める準備も同時進行し、昨年11月下旬にカキ小屋がオープン。週末の土・日曜や祝日に営業する2店舗で、さっそく新鮮なカキが味わえるようになりました。「海南インターから近いので、県外の来客も多く、手応えを感じました。“和歌山に来れば、新鮮なカキが食べられる”と、地域の名物にしたい。塩津が、全国的にもカキの産地として知られるようになるのが夢です」と語ります。

阿部さんが開業する「立征水産」では、主に、卵で生まれてから10カ月以内で一度も産卵していない状態で収穫した「バージンオイスター」を中心に提供しています。「バージンオイスターは小粒ですが、独特の臭みがなくて、甘みが強いのが特徴。カキは生食が主流の欧米では、このバージンオイスターが食べられています。生で食べると、その風味がよく分かると思いますよ」。立征水産では菌検査を済ませた上で、生カキも提供します(今年は12月初旬から)。

「さらに、4月以降になると、産卵を間近に控えて、より濃厚な味わいになる“クリーミーバージンオイスター”も提供できる予定です」とも。

寺脇代表理事組合長

また、もう1軒のカキ小屋「龍王丸水産」を運営するのは、同じく「塩津牡蠣生産者部会」のメンバーであり、海南市漁業協同組合の代表理事組合長を務める寺脇寛治さんです。こちらでは、1年2、3カ月から2年ものを「蒸しカキ」として提供します。「広島や宮城などの本場でよく味わえるカキをイメージしています。ある程度大きさがある“産地ならでは”のカキを提供したいと思っています。塩津のカキも、本場に負けないくらいおいしいですから」と、ほほ笑みます。

塩津では、広島などの代表的な養殖地と同じように、海の中にぶら下げて育てる「垂下式」が採用されています。「水温に合わせて深さを調整したり、成長するにしたがってカキをばらしたり、吊るしたり…と、手間や労力がかかります。高齢化が進む今の漁協では、広がりが難しいかもしれませんが、新しいビジネスチャンスとして、若い人たちが取り組んでくれたらうれしい」とも話す寺脇さん。今後の広がりに期待を寄せます。

2店舗の情報は左記。和歌山の新スポットに、ぜひ今シーズン出かけてみてください。

片男波の干潟、バスケットで養殖 1月に直売・飲食施設をオープン予定

片男波の干潟で育てられたカキ。奥に見えるのが、カキが育つバスケット

昨年、塩津と同時期に養殖業の免許を得たのが、和歌山市の和歌浦漁業協同組合。同漁協の青年部が中心となり、片男波の干潟でマガキの養殖に取り組んでいます。「昔はカキやアコヤガイの養殖が和歌浦でも行われていました」と話すのは、和歌浦漁業協同組合の横田邦雄副組合長理事。

青年部は干潟のアサリ復活にも取り組んでおり、その中で、天然のカキもたくさん採れることが分かりました。そこで、干潟で育ったカキから稚貝を取り、和歌浦生まれ・和歌浦育ちのカキとして養殖することに。干潟で育てるため、欧米やオーストラリアで行われている“バスケット式”というカゴに入れて育てる手法を用いています。「現在、千潟には養殖カゴを吊るしたレーンが6列並んでいて、推定ですが、6000個ぐらいは育っていると思います」と話す横田さん。

育てたカキを販売しようと現在計画中で、和歌浦漁港内にある「おっとっと広場」横に直売・飲食施設を建てようとしています。「来年1月中にオープンできれば」と横田さんは話しています。

場所はどちらも塩津漁港内(海南市下津町塩津)

龍王丸水産

メニュー

蒸しかき
1キロ…2000円
1キロ…2200円 ※それぞれカキの粒の大きさが異なります
1個…400円
かきご飯…400円
釜揚げしらす丼…700円
電話番号 090(3271)6212
営業日

日曜、祝日

期間

来年3月中旬ごろまで営業予定
(ただし、なくなり次第シーズン終了)

立征水産

メニュー

かき
ガンガン焼き食べ放題60分…1人2750円
ガンガン焼き1キロ盛り…2200円

釜揚げしらす丼…660円
生&釜揚げしらす…990円
おにぎり
カキ佃(つくだ)煮…330円
しらす佃煮…330円
ごはん
かき…440円
生カキ(12月初旬から提供予定)
営業日

土・日曜と、連休になる祝日の営業

期間

来年ゴールデンウイークごろまで営業予定(ただし、なくなり次第シーズン終了)

メールアドレス ryuseisuisan@gmail.com

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