−第76回−文化財 仏像のよこがお「盗まれた仏像のゆくえ⑤」

情報提供を募っている、海南市の盗難被害にあった仏像3体。阿弥陀如来立像(左)、善導大師坐像(中)、法然上人坐像(右)

 今年に入り、和歌山県内で仏像盗難被害が確認されました。被害にあったのは海南市海老谷の寺院に安置されていた阿弥陀如来立像と善導大師坐(ざ)像、法然上人坐像の3体です。昨年8月のお盆に確認された後、正月前に被害が発覚したもので、盗まれたのはその間のこととなります。

阿弥陀如来立像は像高53センチ、善導大師像と法然上人像が約37センチ。海南市が過去に行った文化財調査では、それぞれ木造で目は玉眼(ぎょくがん、目に水晶板をはめる技法)仕上げとし、江戸時代の製作と報告されています。

阿弥陀如来立像はさらに古い時期の特徴も見られ、善導大師・法然上人とは作風が異なります。江戸時代に寺院が順次整備されていった状況を仏像が伝えています。

海老谷地区は石清水八幡宮領の野上荘(のかみのしょう)の範囲に含まれる古い歴史を伝える集落です。棚田が広がるのどかな山村で、こうした卑劣な犯罪が発生したことに憤りを感じます。

被害を把握した後、和歌山県教育委員会と海南市教育委員会、そして和歌山県立博物館では、すぐに被害の発生をホームページで公表し、取り戻すための情報提供を募るとともに、無住の寺社を中心に防犯体制を見直すなど、広く注意喚起を行っています。
3体は県や市の文化財指定を受けていませんが、それでも積極的に情報発信を行っていることは、他府県にはみられない意欲的な取り組みです。それには理由があります。和歌山県で過去に発生した仏像等盗難被害はどれも大規模で、2010(平成22)年から翌年にかけては60カ所で仏像172体・仏具90点、16~19(同28~30)年にかけては10カ所で仏像60体が盗まれています。1件の被害が多数の被害につながりうるのです。また、被害仏像の写真を公表することで、転売を阻止する目的もあります。

どんなささいなことでも、和歌山県・文化遺産課保存班073(441)3738、または海南市・生涯学習課文化振興班073(492)0143に情報を寄せてください。(奈良大学教授・大河内智之)

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