鎌倉時代から続く、夏フェスの代表格 夏の風物詩「盆踊り」

 子どもから大人まで、世代を超えて親しまれる夏の風物詩「盆踊り」。浴衣やはっぴを着て、音楽に合わせて大勢で踊る光景はエキゾチック。今回は、本紙連載「祭りびより」の拡大版です。盆踊りの奥深い世界を知り、地元の人たちと一緒に楽しみましょう !

家の近所から聞こえる音楽と歌声
先祖供養に加え、人々の交流の場に

 毎年、お盆の夕暮れ、家の近所から聞こえてくるにぎやかな音楽と歌声。やぐらの周りで輪になり、音頭に合わせて踊る「盆踊り」は、私たちにとって当たり前の光景と思いがち。でも、実は奥深い世界が広がっているのです。

 盆踊りの由来は、鎌倉時代の僧・一遍上人が始めた、かねを打ち鳴らして踊る「念仏踊り」にさかのぼります。

 和歌山県立紀伊風土記の丘・学芸員の蘇理(そり)剛志さんは、「元々、仏教信仰や先祖の霊を供養して、おもてなしをするという意味がありました。次第に、歌舞伎の題材を取り入れて踊るなど、娯楽の要素が加わり、地域の人々の交流の場、男女の出会いの場にもなっていきます」と説明。

 大阪などでは、歌の音頭をとるプロの“音頭取り”が各村を回って踊りを広めました。でも、和歌山は音頭取りを招かず、村単位で独自の歌や踊りを伝承。蘇理さんは「地域によって歌や踊りが異なるので、バリエーションの豊かさに加え、江戸中・後期の歌が残っているのが特徴です」と話します。

 夜が更けてから何時間も踊り続けるところは、現在でいう夏フェスのようなイベントだったのでは…と想像できます。県内4つの地域の盆踊りを紹介します。

知るほどに「盆踊り」って奥深い

団七踊は、紀州藩9代藩主・徳川治貞の参勤交代にお供した岡崎地区の武士たちが、当時江戸ではやっていた、あだ討ちを物語にした歌舞伎「奥州白石噺(しろいしばなし)」や浄瑠璃「碁(ご)太平洋記白石噺」に感動。帰郷後、歌や踊りで地元の人たちに伝えたのが始まりとされています。

白石噺とは江戸時代、奥州白石(現宮城県仙台市)の代官・志賀団七に殺された百姓・与太郎の娘、宮城野(みやぎの)と信夫(しのぶ)姉妹が、父のあだ討ちをするという実話。2人が鎖鎌(くさりがま)やなぎなたの練習に励む「さらし踊り」「薙刀(なぎなた)踊り」、あだ討ちの場面を表現した「団七踊」の3部で構成。たすきと鉢巻き姿の姉妹が、団七に切りかかる場面が見どころです。

日時 8月14日(水)午後7時半~9時
場所 西熊野神社(和歌山市西)

 

目の前に海を望む漁師町。江戸時代初期の1642年、氏神の神事などを行う宮座48軒が20両ずつ出し合って、冬に回遊してくるイナ(ボラ)を取る敷き網を作りました。イナ網漁で地域の経済は豊かに。そのときの漁の動作を踊りにしたのが、塩津のいな踊り。不漁の年に踊ると豊漁になるとされ、お盆が近づくと帰郷した漁師たちが、夜明けまで踊ったともいわれています。

踊りは、漁師がイナを取る動きと、イナが網の中で勢いよく跳ねる様子を表した「手踊り」、旗を持ち、山の上から船に向かってイナの位置を伝える姿を表した「扇踊り」。他にも、2人1組で向かい合って鏡のように踊る「姿見踊り」も。男女の出会いの場ともなり、2人で顔を隠すように頬かぶりをして踊ったそうです。

日時 8月15日(木)午後7時から
場所 みなと広場(海南市下津町塩津)

 

平家の落ち武者が住み着いたといわれる大瀬地区。お盆に、落ち武者の霊をまつる観音堂(今は無い)で踊っていました。当時は1年の中でも盆踊りが一番の楽しみ。江戸時代には約200もの曲に合わせて踊っていたとも。現在は約20曲となりましたが、大瀬出身の80代の3人を含む、伝統芸能教室のメンバーが踊りを伝承しています。

今年は、本宮の名所を歌った替え歌「草津節」や「安珍清姫口説き」。また、11月17日(日)は本宮行政局で「大瀬の太鼓踊」を披露。太鼓踊は「お庭参り」「へんよう」「しんのび踊り」「おたか踊り」で構成され、次第に早いテンポになっていくのが妙味。扇を持って優雅に舞う踊り子の輪の中央で、太鼓打ちが足拍子を取りながら大きな動作で太鼓をたたき、音を響かせます。

日時 8月18日(日)午後7時から
場所 大斎原(田辺市本宮町)

 

人里離れた山奥にある平治川。この地区に住み着いた平家の落ち武者が、先祖供養のために「長刀踊」を踊ったのが始まりといわれています。現在、地区は無人になりましたが、踊りは伝統芸能教室「熊野本宮子ども教室」の子どもたちによって受け継がれています。

歌詞は、源平屋島合戦のときの「那須与一扇(なすのよいちおうぎ)の的」の物語。紅白のたすきをかけ、平家役と源氏役になった子どもたちは、源平の合戦を表現するように、なぎなたを力強く振り上げたり、下ろしたりしながら踊ります。山あいの狭い踊り場だったため、一列で踊るのが特徴ですが、8年ほど前から、「エイッエイッ」「ヤーヤー」の掛け声や新たな隊形が加わり、イベントや運動会などでも踊られています。

日時 8月13日(火)午前11時から ※成人式の式典内で
場所 本宮町行政局(田辺市本宮町

 

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