和歌山県の手仕事を訪ねて
竹と土、受け継がれる技
国内唯一、黒竹の産業を守る

リビング和歌山2026年3月7日号「和歌山県の手仕事を訪ねて 竹と土、受け継がれる技 国内唯一、黒竹の産業を守る」

古くから暮らしの道具や建築の材料として生かされてきた黒竹と、土の壁を仕上げる左官の技。自然素材と向き合い、手の感覚で形を生む職人の仕事は、今も受け継がれています。特集「手仕事を訪ねて」は、黒竹と左官の世界を紹介します。

日高町原谷の特産「黒竹」
国内唯一、伐採から生産までを

竹は繊細なため、あぶり過ぎると内部(空洞)の空気が熱で膨張し、破裂することも

明治初期から黒竹の植林が始まり、昭和後期には全国一の生産地として知られた、日高町原谷(はらだに)地区。深みのあるつやと高級感を備えた黒竹は、日本家屋や庭づくりの資材として使われ、地域の産業として発展してきました。

しかし近年は、高齢化による後継者不足やシカの食害で竹林が荒れるなどし、生産に関わる人が減少。こうした課題は全国各地でも共通し、今国内では「金﨑竹材店」(同町原谷)1社だけが営みを守り続けています。

「黒竹産業はもともと分業制でしたが、担い手が減ったことで、少しずつ自社で作業を行うように」と話すのは4代目の金﨑弘昭さん(写真)。

同社は117年前に、黒竹の事業を始め、現在、同地区と高知県の竹林を合わせ約30㌶(甲子園球場約8個分)を管理。金﨑さんと父で3代目の昭仁さんを中心に、伐採から生産までを一貫して行っています。

青竹と違い、黒竹の寿命は3年。1年目は青く、3年目には枯れ始めるため、2年ものを伐採します。金﨑さんは、「2年で太さ直径約1~5㌢、高さ約8~10メートルに。細いものは庭の竹垣、太いものは内装などに使われています」と説明します。

伐採した黒竹は一定の長さに切りそろえ、天日乾燥で保存。出荷前には一本ずつ900度の炎であぶり、工具で手際よくまっすぐに整えます。「火にあぶると幹から油分が浮き出し、それを布で磨くことで深いつやが生まれるんです」と話します。

伐採は9月〜翌年2月ごろ。太さや長さよりも色づき具合でよい竹を見分けます

同じ長さに束ねて保存

植林や体験会などのイベント
衣食住につながる可能性を発信

多くの人に黒竹の良さを知ってもらおうと、同社は3年前に「黒竹を守る会」を設立。地元の子どもたちと植林を行う他、竹かごや民芸品づくりなどのイベントを通して、黒竹に触れる機会を広げています。

「竹は私たちの“衣食住”にも関わっています。例えば、春はタケノコで食卓に並び、生長すれば幹は庭材の他、食器などに加工されます。繊維はTシャツなどの衣服、葉は肥料やお茶になり、幹も枝も葉も捨てるところがほとんどありません」と伝えます。

同地区は熊野古道沿いに位置。平地の耕作放棄地を借りて黒竹を栽培することで、景観の保全にもつなげています。金﨑さんは、「知れば知るほど、竹が好きになっていく自分がいます。黒竹の生産地として、竹のさまざまな可能性を発信し、広めていきます」と話しています。

2025大阪・関西万博の和歌山ゾーンで黒竹を使った作品が展示されました(竹工芸家・4代田辺竹雲斎さん作)

竹小物

ボールペン
(3850円)

えとの民芸品
(大1100円、小650円)

はしとはし置き
(1320円)

金﨑竹材店

問い合わせ 0738(63)2101
住所 日高町原谷1293
営業時間 午前8時~午後5時
定休日 日曜
HP https://kurochiku.com/
Instagram @kurochiku_kanasaki

自然素材と向き合う左官の空間づくり

何種ものこてを使い分け、跳動感を生み出します。筋肉のつき方、毛の一本一本まで丁寧に仕上げます

多様な素材の組み合わせ
こて一本で仕上げる職人の技

日本の住宅様式は、土壁の家から、クロス仕上げ中心の家へと姿を変えてきました。しかし近年、自然素材を生かした住まいづくりが見直され、土や漆喰(しっくい)を扱う左官の技に関心が集まっています。こて一本で仕上げるには、機械では生み出せない質感と表情があります。

高度経済成長期に新たな建材が普及するまでは、地域の土やわら、砂などを混ぜ、竹で組んだ下地に壁を塗る“地産地消”が一般的でした。「橋本市は青みがかった土、紀美野町は黄、海南市は赤など、土地ごとに色が異なります。築年数のある土壁住宅を修理するとき、使用された素材や配合具合を見極め、当時と同じように仕上げることが重要です」と話すのは、文化財の修復なども手掛ける「原左官工藝」2代目の原慶介さん(写真)。

土壁の施工は、気温や湿度、日当たり、雨風といった自然環境の影響を受けます。そのため工程を一律にマニュアル化することが困難です。わずかな調整を誤れば、壁にひびが入ることも。石灰や骨材、わらなどを環境に合わせて調整する“塩梅(あんばい)”が問われます。

近年は、メーカー製の塗り壁が主流となり、鉱物を用いた新たな表現も広がっています。それでも、最終的な仕上がりを左右するのは、左官の技術。「一見、平らに見える壁でも実は中央を膨らませて塗っています。視覚効果や光の当たり方で、壁面を美しく見せる効果があります」と伝えます。

現場の仕上がりを左右する、職人の相棒「こて」

レリーフや立体物など多彩
光の陰影で跳動感が生まれる

20年ほど前から原さんは、壁のレリーフなど立体的な表現にも取り組んでいます。これまでに手掛けた題材は、風神雷神や竜、牛などさまざま。大小のこてを使い分けながら何層にも塗り重ね、彫刻のように形づくられたレリーフは、見る角度によって陰影が生まれ、躍動感のある表情が浮かび上がります。

「左官は壁を塗るだけではなく、空間そのものをつくる仕事です。先人が生み出してきた職人の技を学び、自身の技術を磨き続けることが大切で、終わりはありません」と話します。

子どもたちに左官が扱う素材のおもしろさを伝えようと、初代である父・健一さんとともに、基本毎週日曜の午前中、同社で「光るどろだんご教室」を開いています(要予約、大人も可)。原さんは「呼吸、調湿、経年変化と、土壁は生きものなので、同じものは二つとありません。だからこそ奥深く、楽しいのです。左官の魅力や仕事の広がりを伝え、次に続く人が少しでも増えてくれれば」と話しています。

質感や色味を確認するために制作した壁のサンプルがずらり

壁面をキャンバスのようにデザインし、空間を演出

葉を使って模様をつけた土壁のサンプル

ご飯釜も!
趣味でつくったシーサーをモチーフにした釜。ご飯以外の料理も楽しめるそう

体験

「紀の国わかやまものづくりフェア」で行った、えとの絵馬作りのワークショップ

「光るどろだんご教室」は大人500円、子ども300円。開いていない日もあるので要確認。詳細は原左官工藝へ

 

原左官工藝

問い合わせ 073(432)6329
住所 和歌山市湊御殿2-6
営業時間 午前8時~午後5時
HP https://www.harasakan.jp/
Instagram @hara.sakan

手仕事ワークショップ

「黒竹はしづくり体験」

●4月2日(木)午前10時半~11時半

 黒竹をナイフで削り、サンドペーパーで磨いて自分だけの一膳を仕上げます。手を動かすほどに竹の表情が変わる、素材の魅力を感じてください。金﨑さんによる竹割りの実演もあり。

対象 小学4年生以上(小学生は大人1人同伴)
定員 約20人
材料費 1000円 ※当日、受け付けで支払い、はし置きは別途となります
持ち物 ゴム手袋(園芸用など、滑り止め加工のあるもの)
場所 リビングカルチャー倶楽部(くらぶ)フォルテ教室(和歌山市本町2-1フォルテワジマ4階)
「こてでつくる!アートボード」

●3月28日(土)午後1時半~3時

 土を塗る感触を楽しみながら、子どもは手形をぺたん。成長の思い出になります。シーグラスなどでデコレーションして、入園・入学、新級前の記念に! 大人はこての技を学び、DIYに生かして。インテリアにもなるアートボードを仕上げます。

対象 子ども(小学生以下は大人1人同伴)、大人だけの参加も可
定員 約10人
材料費 1500円 ※当日、受け付けで支払い
持ち物 飾りたいものがあれば持参、手拭き用のタオル、ハンドクリーム ※汚れてもいい服装で
場所 リビングカルチャー倶楽部フォルテ教室
(和歌山市本町2-1フォルテワジマ4階)

ワークショップ申し込み方法

メールで申し込み 件名に「黒竹」、または「左官」と入力
本文には
①参加者の氏名(ふりがな)と年齢(何十代でも可)
②同伴者氏名・続柄
(参加者が小学生以下の場合だけ)
③連絡先の電話番号を明記し、下記アドレスまで
※複数で参加の場合は全員の氏名と年齢を記載
【メールアドレス】mou@living-web.net
※メールで申し込むのが難しい場合は、下記、和歌山リビング新聞社に電話を
締め切り 3月23日(月)午後5時まで
応募多数の場合は抽選。当選者にだけ、3月24日(火)にメール、または電話で連絡します
※メールや電話で連絡が取れない場合は、参加していただけません
問い合わせ 073(428)0281
和歌山リビング新聞社
(祝日除く月~金曜午前9時半~12時、午後1時~6時半)

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