−第27回−文化財 仏像のよこがお「取り戻された等身大の観音像」

西山観音堂・十一面観音立像

西山観音堂・十一面観音立像

紀の川市貴志川町西山地区の産土(うぶすな)社、丹生(たんじょう)神社に隣接して西山観音堂が建っています。江戸時代まで丹生神社の管理に携わっていた普門寺の唯一残った建物で、像高182cmの大きな十一面観音立像がまつられています(写真)。ヒノキを用いた一木割矧造(いちぼくわりはぎづくり)で、丸々として円満な頭部、均整が取れた穏やかな肉付きの体型、彫りが浅く流麗な衣紋(えもん)など、平安時代後期、12世紀の特徴を示しています。

観音堂の周辺一帯は、かつて貴志荘といわれた荘園で、平安時代後期には京都・仁和寺の荘園でした。仁和寺門跡(皇族出身の住職)の覚法法親王が、1147(久安3)年に高野参詣を行った際には荘司の貴志友兼が支援を行っており、都の大寺院と結びついていた地域でした。洗練された出来映えを示す本像も中央の仏師の関与により造像されたのでしょう。紀の川市指定文化財に指定されています。

2018(平成30)年3月、こんなに大きな仏像が盗難被害に遭いました。普段は参拝者が少なく、人家も周囲になく人目に付かない状況で、犯罪の抑止力が低下していたところを狙われたのです。警察の捜査とともに、教育委員会による全国への情報照会、マスコミによる被害報道、インターネット交流サイト(SNS)での情報拡散などの対策が功を奏して、幸いにも3カ月後に取り戻すことができました。

本体の損傷は最小限で済みましたが、台座が破損してしまい安定して立てられず、また光背も付けられなくなったため、市の補助金も得て、今年1月にようやく修理が完成しました。これからの文化財保護のためには、防犯対策への支援、盗難被害後の取り戻し活動への協力、修理への支援など、みんなでサポートする方法を考えていく必要があるでしょう。

企画展「仏像は地域とともに―みんなで守る文化財―」で3月6日(日)まで公開中。
(和歌山県立博物館主任学芸員・大河内智之)

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