治療の最前線! 専門医に聞くvol.35
年齢を理由に諦めないで
70歳以上の腕が上がらない肩の悩み

 日頃診察していると、70歳以上で約4割、80歳以上で約5割に、痛みの有無に関わらず肩を動かす筋肉・腱板(けんばん)が切れる「腱板断裂」が起こっているといわれています。そのままにしておくと、関節に障害が生じ、「腱板断裂性肩関節症」などを引き起こすことがあります。

腱板が大きく切れていると痛みが出て、服の着脱や洗髪など、腕を上げる動作に支障が出ます。中には、脳梗塞でまひが起きたかのように腕が上がらなくなる人もいます。特に、和歌山県では農業に携わる高齢者が多く、ミカンやモモ、カキの収穫などで腕を上げる作業が欠かせないので、困っている人も少なくありません。

半年から1年のリハビリで改善する人もいますが、十分な改善が見込めない場合や、リハビリに時間をかけられない場合は、2014年に保険適用となった「リバース型人工肩関節置換術」という治療法があります。これまでは、腱板を再建するために別の筋肉を移して働きを補う手術が行われてきましたが、難易度が高く手術時間も長い上、成績が安定しにくい面がありました。「腱板断裂性肩関節症」や「変形性肩関節症」などに対し、腱板が切れていても腕が上がりやすいよう肩の構造を作り変える手術です。比較的早い段階で腕が動かしやすくなるのが特長で、リハビリ期間も3カ月から半年程度で済むことが多いです。

この手術は実施できる医療機関が限られています。年齢を理由に諦めず、日常生活で不便を感じている70歳以上の人は、一度専門医に相談を。
(済生会和歌山病院 整形外科・藤木貴顕)

藤木貴顕医師

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